「憧れはあるけど、それに近づけない」

 大学入学後、原口は自分よりもはるかに能力の高い学生がいることに気づかされた。ワールドビジネスフォーラムという授業では、世界で活躍する先輩方を見て、「いいなぁ。私もあんな人になりたいな。でも、どうせ私にはできないだろうな」と感じていた。そうした原口にも、「世界を舞台に働きたい!」という夢があった。だが、周りと自分を比較し、自分ではどうにもできない能力の格差があると思い、行動できずにいた。

「臆病な自分を変えたかった」

 そうした中、一つの転機となったのは東日本大震災の支援団体の立ち上げだった。大学入学前の3月11日、東日本大震災が起こった。その時も、原口は東北のために何かしたいと思いながら、何もできずにいた。ある日、被災した友人が「一緒に東北を支援するクラブを作らないか」と彼女を誘った。集まった部員は5人。活動内容は全く想像できなかった。しかし原口は、「行動を起こしたくても起こせない自分を変えたい」とクラブの立ち上げに動き出した。
 その結果、「東北SUNRISE」という東北復興の支援団体が発足。仮設住宅を訪れた際に、被災者の方に「何か私たちにできることはありませんか」と伺った。すると、「私たちのことを忘れないでほしい。来てくれるだけで嬉しい」という言葉が返ってきた。その瞬間、この団体を立ち上げて良かったと実感した。「行動しないよりも行動したほうがいいなって気づいたんですよね」と原口は当時を振り返る。

被災地を訪れた。「人の安心・安全な暮らしを提供したい」と心に決めた。

 2年次の5月、東北SUNRISEの活動で岩手県を訪れた。崩壊した建物を目の当たりにした時、建物が人の生活に与える影響の大きさを感じた。「今まで、建物があるのが当たり前だと思っていたけれど、人を災害から守る役割も持っていたんだ」。今まで持っていた「世界と関わりたい」という思いに加え、「建物を通して、人の安心・安全な暮らしを提供したい」との思いが湧いた。

「私らしく頑張ればいい。決めたことはとことんやろう」

DREAMGATE

 原口を変えたもう一つの出来事が、留学生との出会いだ。世界への憧れを抱いていた彼女は、国際交流の活発な創価大学で、留学生の友人をつくろうと決めていた。しかし、自分の英語力に自信がなく、なかなか一歩を踏み出せずにいた。そんな中開催された大学祭で、彼女は留学生が運営する模擬店会場にいた。「どうにか自分から声をかけてみよう」。原口は近くにいた留学生に思い切って話し掛けてみた。話せたのは一瞬だったが、彼は原口のことを覚えていた。数日後、自分の誕生日パーティーに招待してくれたのだ。彼らに「英語が全然話せないんだ」と片言の英語で不安を吐露した。そんな彼女に返ってきたのは「自信を持って!今話せてるよ!」という明るい励ましだった。今までは、完璧な英語力を持っていないとダメだと考え、英語ができない自分を卑下していた。しかし、彼がその固定概念を崩してくれた。英語力で人を判断しない。私という人間を見てくれる。そんな彼らと話すのはとても居心地が良かった。
 より実践的な英語力を身につけると決意した原口は、留学生と英語で議論するEnglish Forumに参加した。最初は、流暢な英語を話す学生を見るたび、声が震えた。しかし、いざ参加してみると、周りの留学生が優しく説明してくれ、楽しかった。「行動を起こすブレーキをかけていたのは自分だったんですよね。自分なりに頑張ればいいんだと気づきました」。その後、2年次には100回以上もその場に足を運んだ。その結果、英語力は上がり、3年次にはインドネシアへの留学を決めた。インドネシアの人々は周りの環境に負けない強さを持っていた。「ありのままの自分でいいんだ」。留学中、原口はアジア一人旅や現地のダンスチームに所属するなど自分らしく挑戦した。「やらずに後悔したくない」。そんな思いが小さな行動へと繋がり、その積み重ねが次々と実を結んだ。

「創大初の女性総合職」という道を拓けるゼネコンか、 ものづくりを通してグローバルに働くことができる部品メーカーか

 帰国後、原口の就職活動が始まった。2年次から希望していた総合建設業界に進むため、20名以上の先輩を訪問。先輩の話を聞いていく中で、原口は「創大から総合建設業界で女性総合職第一号になろう」という使命感に駆られた。
 その一方で、建設業界の仕事が、自分の考える海外との関わり方と異なることに気づいていた。「創大初の女性総合職のためという使命感だけでやっているんじゃないかなってもやもやしていました」。そんな迷いを抱え、原口はキャリアセンターの職員と面談をした。「原口さんのやりたいことって何?」キャリアカウンセラーからの質問に対し、原口は自分の思いを全てぶつけた。「それって建設業界に行ってできるの?むしろ建設以外の総合電機や部品メーカーの方ができるんじゃない?」その瞬間、原口は「そうだ!」と感じた。今まで建設業界にしか目を向けていなった原口は、今までの自分をもう一度見つめ直した。「日本のものづくりを海外に伝えたい」、「完成品よりもそれを陰で支えるような仕事がしたい」、「興味のあることを極めたい」。そんな内的キャリアを整理していくうちに、「部品・機械業界」が自分の目指すものと一番結びついていることに気がついた。

「注目されるようなことなんてしていない。でも私らしい創大生活が送れた」

 それから原口は、部品・機械業界の採用試験に挑戦した。そして遂に、希望していた部品メーカーから内定を勝ち取った。「私は全然注目されるようなことはしていません。でも私らしい創大生活が送れたと感じています」。創大生活を充実させることができるのは他でもない自分であることに気づいた4年間だった。「自分らしく」。そう言い聞かせて原口はこれからも挑戦を続ける。

原口那津子の4年間

1.入学

DREAMGATE

「世界平和に貢献できる人になりたい」との思いで創価大学に入学しました。

2.ワールドビジネスフォーラム の受講1

世界を舞台に活躍している先輩の姿を見て、「自分もこうなりたい」と漠然と思うようになりました。しかしそれと同時に、自分自身の無力さも感じていました。

1ワールドビジネスフォーラムは世界で働く魅力や仕事のやりがいを理解し、学生生活のキャリアデザインを行う授業。

3.東日本大震災のボランティア

DREAMGATE

「被災地のために貢献したい」との思いで、友人と共に東北支援団体を設立。ボランティア活動を通して、「住環境」が与えるインパクトの大きさを実感し、建物を通して人の命に関わりたいと思うようになりました。

4.English Forum2での鍛錬

DREAMGATE

苦手だった英語を克服するために、1年間で100回以上もEnglish Forumに通いました。留学生との会話練習を通し、徐々に英語に対して苦手意識がなくなりました。

2English Forumは、いろいろな社会問題や国際問題から身近な話題まで世界中から来ている留学生たちと気軽にディスカッションできる場。

5.インドネシアへの留学

DREAMGATE

地道な努力で勝ち取ったインドネシアへの留学。現地では、インドネシア人の個性を大事に生きていく姿に共感をし、自分らしく生きていくことの大切さを学びました。

6.キャリアセンターでの面談

キャリアカウンセラーの方との面談を通し、それまでずっと目指していた建設業界ではなく、部品メーカーの方が夢の実現に近いことに気づきました。そこからは部品業界を第一志望として就職活動に励みました。

7.内定

部品メーカーより内定をいただきました。

8.CSS(キャリアサポートスタッフ)3

お世話になった創価大学のため、CSSとして日々の活動に全力で挑戦しました。

3CSS(キャリアサポートスタッフ)は進路が決まった4年生のグループで、主に1、2年生のキャリアサポートを行う。

9.卒業

卒業してからが戦いだと思います。創大でたくさん成長させて頂いた分、今度は私が少しでも力になれるよう、創大のため、そして後輩のために、道を拓いていく決意です。